「PDCA」という言葉を、皆さん一度は目にした経験があるのではないでしょうか。「PDCA」とは、正しく活用すれば多くのメリットがある強力なフレームワークです。しかし、実装方法が誤った場合は、望む結果が得られない場合もあります。この記事では「PDCA」について、説明していきます。
PDCAとは
PDCAとは、下記4つのステップを繰り返す手法であり、「PDCAサイクル」と呼ばれることもあります。
・Plan(計画)
・Do(実践)
・Check(アセスメント)
・Action(修正と対策)
これは、スキームを立て実践し、その結果をアセスメントし、修正するという循環を働かせることです。
この枠組みでは、継続的な修正の周期として、繰り返し実施することで、ビジネスのパフォーマンスを修正することができます。
新入社員の研修で学ぶことが多く、ビジネスパーソンには馴染みがある手法です。
「Plan」「Do」「Check」「Action」の詳細
この一続きの枠組みを構成するそれぞれの要素について、詳しく説明していきます。4つのプロセスをきちんと理解することで、良質な修正過程を踏んでいきましょう。
Plan
Plan(計画)は、ゴールを設定し、そのゴールを達成するために必要な手順を予測することを意味しています。
予測をする際は、5W2Hを意識して検討を重ねます。
※5W2Hとは?
誰が(Who)・いつ(When)・どこで(Where)・何を(What)・なぜ(Why)・どのように(How)・いくらで(How much)
ゴールや、そのゴールを達成するために必要な手順のスキームは、この一続きの枠組みを回す際の最初に行うものです。
誰が見ても分かりやすいゴールやスキームを立てるために、数字で把握できる指標を積極的に用いることが重要です。
Do
Do(実践)は、Plan(計画)で立てたゴールやスキームを基に実践することを意味しています。
「実践」というと、「立てたスキームを確認しながら、業務を着実に遂行して行くこと」と考える人が多いのではないでしょうか。
この一続きの枠組みにおいての「実践」は、「試行」の意味も含んでいます。
Do(実践)では、スキームを実践に移してみた結果、それが良かったのか、別の効率的なやり方があったのではないか、などを検証する段階でもあります。
そのためには、下記4つがポイントになってきます。
①全てを一度に行わない
②ゴールに対しての進捗や結果を記録する
③時間をはかるで数値的な結果が得られるように行動
④計画通りに進まない場合も、その旨を記録する
Check
Check(アセスメント)では、実践したスキームをアセスメントし、その結果が期待通りであるかどうかを確認します。
予測した通りに進まなかった場合は、その原因に対して、分析をする必要があります。
スキーム通りに進んだ場合も、成功の要因分析を行いましょう。
成功、失敗どちらにおいてもPlan(計画)で立てた数値のゴールを検証します。
数値を具体的根拠として、具体性を持ったアセスメントとしてまとめることが、チェックでは求められます。
Action
アセスメントに基づいて、必要な修正を行い、修正を実践します。
Action(修正と対策)では、一段階前のCheck(アセスメント)での分析・課題について修正点を考えます。
修正点を考える際には、選択肢を多く持つことが大事です。
多く持った選択肢の中から、次の課題を検討していきましょう。
PDCAのメリット
この一続きの枠組みによって、以下の3つのメリットが得られます。
1.目標やタスクが明確になる
1つ目のメリットは、ゴールやタスクの明確化です。
目標を明確にすることで、修正に向けたアクションを実践することができます。
明確な目標がなければ、本来達成するべき着地とのズレが生じ、具体的な施策を考えることが困難になります。ビジネス活動は、設定したゴールを達成することで拡大するものです。タスクを明確にすることで、適切なゴールを設定することができます。
2.行動に集中することが簡単になる
2つ目のメリットは、行動に集中することが容易になることです。スキームの段階で、ゴールやアクションがすでに設定されているため、何をすべきか、明確に理解できます。ゴールやアクションプランの理解は、行動や仕事への集中に大きく影響を与えます。スキームを立てる際に設定したゴールやスキームに集中することで、生産性を向上することができるでしょう。
3.問題や欠陥が明白になる
3つ目のメリットは、課題や不足が明確になることです。この一続きの枠組みでは最初の段階で、数値を活用してゴールを設定します。立てたゴールの達成やアクションプランの実践に向けて行動して行くことで、ゴールと結果の乖離も明確に分かります。そうすることで、どのように修正すればいいのか、何を変えれば向上するのかなどについて考えやすくなります。 この一続きの修正過程を踏めば、ゴールが明確化するだけでなく、集中度やゴールと結果の乖離などの課題も明らかにすることができます。
PDCAのデメリット
この一続きの枠組みの欠点について、説明していきます。
PDCAは、ゴール達成のための方法だとこれまで説明してきました。
しかし、この一続きの枠組みを長期的に使用することで、PDCAそれ自体が目的となるという、本来の方法とは離れてしまいます。
これは、この一続きの枠組みの本来の意味や課題を理解していないためです。
本質的な課題を明確に理解し、ゴールや課題に対して何をすべきかを意識しながら、一続きの修正過程を運用するのが重要であることを理解することが重要です。
PDCAを成功させるために気を付けるポイント
ここまでは、PDCAについて説明をしてきました。
実際にこの一続きの枠組みを運用して行く際には、どのようなことに気をつければいいのでしょうか。
ここでは、この枠組みの成功のための3つのポイントを解説します。
1.「可視化」して予測を着実に実践する
PDCAにおいて、どんなに完璧なPlanを立てても、次のDoが上手くいっていなければ、成果にはつながりません。スキームのように実践できなければ、次のチェックで正しくアセスメントできないどころか、アクションで行う仮説を立てるときや分析も、そしてこの修正過程も踏めなくなってしまいます。 思うようにスキームを実践できないときには、第三者視点を加えてみてください。また、この一続きの修正過程の項目のDoについて、プロセスや現状課題などのデータを記録するルールをつくれば、次のチェックによって定量的な分析がしやすくなります。このような枠組みの可視化が、成功のためのひとつです。
2.「習慣化」して定期的にアセスメントする
PDCAを活用していき、生産性を上げるためには、一定のタイミングでチェック、アクションを進捗確認して行くことが重要になります。定期的に進捗確認やアセスメントをしていけば、この一続きの枠組みの運用速度を落とすことなく、動きの精度を高めていけます。また、日々やらなければならないタスクも明確なものになるでしょう。うまく進捗が進んでいない場合には課題を見つける必要がありますが、多忙な人は、チェックやアクションのステップを後回しにしてしまいがちです。チェックやアクションをしなくても、問題が起きないのがこの一続きの枠組みの落とし穴です。 そこで、「毎週月曜日の午前8時から1時間は修正過程の振り返りを行う」とスケジュールを立てることがおすすめです。定期的に見直す機会をつくり、検証・修正を行えば、サイクルを素早く回せるようになります。さらに、成果も上げられるようになることでしょう。
3.「仕組み化」して無理のない計画にする
PDCAの失敗は、大半がPlanのステップで起きています。これは、ゴールやスキームを立てているときに起きるのですが、理想がふくらみ、現実を加味できていないものになってしまうことがあるからです。 最初のゴールは、無理をしない範囲で設定し、この一続きの修正過程を踏んで行く中で、ゴールの上方修正を行う、可視化・習慣化できるようにするような、一続きの枠組みが上手く回りやすい仕組みを構築することがポイントです。
PDCAが失敗する要因
PDCAを導入していても、失敗は多々あります。
ここでは、この一続きの枠組みの「Plan」「Do」「Check」「Action」のそれぞれ各ステップにおける、失敗してしまうポイントについてご紹介します。
Planの失敗要因
Planのステップでは、「高すぎるゴールを設定してしまう」失敗が起きます。ゴールが高すぎると、諦めてしまったり、モチベーションが落ちてしまったりしてDoの精度が下がり、結果としてPlanの計画が崩れる結果になってしまいます。高すぎるゴールによって気持ちが落ち込んでしまうと、高いアウトプットは期待できなくなりますので、注意すべきです。
Doの失敗要因
Doのステップでよく起きる失敗の要因は、Planで設定したゴールに対し「取り組みが不十分なこと」です。「この修正過程に取り組む必要がなぜあるか」を理解した上で注力することが重要です。行動の記録管理方法が不揃いで、記録しなければいけないものが不足していたりすると、最適なDoがおこなわれていても、チェック以降で行われるサイクルが落ち込んでしまう可能性がありますので、環境構築も重要です。
Checkの失敗要因
Checkはこの一続きの枠組みにおいて、最も壁にぶつかりやすいです。よく起きる失敗の要因は「振り返りを行わないこと」「アセスメント基準が確定していないこと」が挙げられます。 PDCAなのに、振り返りを大繩図、中途半端にしてしまうのは最も良くない行為です。ゴールは定量的にゴールの数値をしっかりと設定し、達成率を集計するなどして客観的にアセスメントを行う必要があります。
Actionの失敗要因
アクションのステップでは、「修正するための視点を多く持ち合わせていない」ということによる失敗があります。業務修正においては「ECRS」があります。
ECRSとは、下記4つから構成されています。
・Eliminate(排除)
・Combine(結合と分離)
・Rearrange(入れ替えと代替)
・Simplify(簡素化)
少なくとも上記4つ以上の視点が必要となるのですが、直感や経験、前例のみでなんとなく修正策を導き出してしまうと、本質的な解決に導くことができなくなってしまうおそれがあります。アクションにおいて、全てを想定してから分析をします。さらにDoとチェックの内容・結果から、うまくいった理由・いかなかった理由を、論理的にしっかりと分析する必要があります。最終的なゴール達成に向けて何をするべきなのか、ゴール達成のためのアプローチを検討して行くと、最初に思いつかなかったような新たな課題が生まれてくる可能性もあります。
PDCAを効果的に回すポイント
PDCAは誤って理解している人も多く、効果のない枠組みになってしまっているケースもあります。ここでは、この一続きの枠組みを効果的に回すポイントを4つ紹介します。
1.目標設定を明確にする
PDCAを回して達成したいゴールはわかりやすく、具体的にしましょう。誰がいつ確認してもわかるように定量化し、ゴールの達成までの期日を決めることが重要です。ゴールが明確であれば、進捗状況を追いやすく、具体的な行動につながりやすいです。また、ゴールが大雑把過ぎたり、現実の乖離が大きいと、検証や修正のプロセスに紐づけにくい傾向があり、この修正過程が効果的に踏めなくなる原因にもなります。解決すべき課題や、方向性を間違えないためにも、この一続きの枠組みで達成したいゴールは明確にするべきです。
2.記録を数値化して管理する
実践の結果を細かくしっかりと記録していければ、検証や修正のプロセスで検討しやすくなります。なので、数値化できる結果は、数値で記録していきましょう。そして何よりも、結果の良し悪しに関わらず、事実をしっかりと記録することが大切です。悪いところがあっても、この修正過程を踏んで行くことで日々修正されて行くでしょう。
3.進捗を把握する
定期的に進捗の状況を確認し、把握することが重要です。詳細なデータは、この一続きの枠組みを最適に回すために役立ちます。反対に、進捗の状況を把握できていないと、スキーム通りにならないリスクも考えられます。遅れることなく、スキーム通りに進んでいるか、こまめに確認し、遅れが発生してしまっていたら、その原因を記録していきましょう。
4.原因を掘り下げる
PDCAを回して行く中で発見した課題は、「なぜ?」を繰り返し、原因を掘り下げて行く必要があります。原因をどんどん掘り下げていけば、次にやらなければいけない内容が明らかになるでしょう。表面上の課題だけではなく、根本にある問題を解決することで、より良質な修正が期待できます。
PDCA以外の関連フレームワーク
PDCA以外の関連フレームワークは、多数あります。
ここでは、それ以外の関連フレームワークをご紹介します。
OODA
OODAループは、製造業の現場でよく用いられていて、PDCAサイクルとは異なります。
OODAループは、途中で前の段階に戻りループの段階から再開したり、任意の段階からループを再開することが可能なのが大きな特徴です。Plan(計画)に基づいて1周するPDCAサイクルに比べると、OODAループは変化に対応しやすく、自由度が高いことが大きな違いです。
PDR
PDRとは、「Prep(準備)」「Do(実践)」「Review(アセスメント)」の3つを行うメソッドです。
PDCAとの違いは、サイクルのスピードが早いことです。PDRは、詳しい計画を考えるのではなく、次のステップの実践内容の、「目的を決める」という簡単な準備からスタートします。 目標数値を立てないことで、速いスピードでDoのステップへ進むことができます。目標数値を立てると、ゴールの達成を測るために、一定の期間を待つ必要があります。しかし、PDRはゴールとの比較をするアセスメントではないため、短い期間で迅速にReviewに進むことができます。
G-POP
G-POP(ジー・ポップ)とは、フレームワークです。PDCAには「ゴール」の意識が持ちにくいというデメリットがあるとG-POPを提唱した中尾隆一郎氏は指摘しており、頭にGoal(ゴール)、そして下にPre(事前準備)・ON(実践)・Post(振り返る)の3つを並べることを提唱しています。 ゴールから逆算して行くことで、ゴールを常に意識できます。
PDCAによる修正の具体的事例
ここでは、この一続きの枠組みによる修正の具体事例をビジネスシーン・普段の生活の2つでご紹介します。
ビジネスシーンでの事例
デジタルアイデンティティで実施した、バナークリエイティブのPDCAを見ていきましょう。
A、B、C3つのバナーを配信したところ、Aが一番効果が良いということがわかりました。
ここから、より高い効果が得られる配信を目指すために、現状の問題の発見とそれに向けた修正、アセスメントと修正するための修正過程を踏んで行く必要があります。
他のバナーをブラッシュアップするために、Aを取り入れたバナーを検討し、バナー内に訴求をプラスするなどの修正案が挙げられるかと思います。
PDCAのPが終わったので、Dに移ります。 修正案に沿って作成したバナーを追加して配信します。
何度もテストを行い、効果を測定します。
Dが一通り終わったら、測定して得た効果を比較・検証し、Cに移行します。
良い物は残し、悪い物は削ります。
Dの段階で測定した効果を検証し、より効果の良いクリエイティブを探し続けます。これで、この一続きの枠組みが一通り完了します。この枠組みに終わりというものはありません。またPの段階からスタートし、修正を続けていきます。
普段の生活での事例
PDCAはビジネスにとって有効的なだけではなく、自分の生活リズムを修正することも可能です。たとえば、あなたのキャリアの進歩を邪魔している問題と原因を見て、ゴールを設定して、克服するためのスキームを立てます。そのスキームを確認したら、理想の結果に向かって、様々な方法を試します。定期的に進捗確認を行い調整を行い、行動の結果を検討します。効いていない方法は中断します。 このように、日常生活の中でもこの一続きの修正過程を踏むことで自分のゴールや生活リズムを修正したり達成したりすることに役立てることが出来ます。
まとめ
いかがでしたか?
正しいPDCAを理解し、ビジネスのパフォーマンスを修正していきましょう!